「何も症状がないから大丈夫」は、性感染症では通用しない。逆に、心配になった翌朝に検査して陰性でも、それだけで安全が確定するわけではない。検査には、病気ごと、検査法ごとに“見つけられる時期”がある。
風俗店を利用した人、コンドームなしの接触があった人、オーラルセックスだけだった人。どこで、何を、いつ調べればよいのか。保健所、医療機関、郵送検査の違いと、現実的な費用までまとめる。
まず「症状があるか」で行き先を分ける
症状があるなら、検査キットより医療機関
排尿時の痛み、尿道からの分泌物、性器や口のただれ・しこり・水疱、発疹、発熱、睾丸の痛みなどがある場合は、泌尿器科、皮膚科、性感染症内科などを受診したい。医療機関なら診察、検査、診断、治療までつながる。症状がある場合や医師が必要と判断した場合は健康保険が適用されることもある。
市販薬や手元の抗菌薬を自己判断で飲むと、症状だけ弱まり、検査や診断を難しくすることがある。淋菌では薬剤耐性も問題になる。薬を飲む前に受診するのが基本だ。
無症状で不安なら、保健所・自費検査・郵送検査
厚生労働省の性感染症検査・相談マップでは、全国の保健所や自治体検査を検索できる。HIV検査は無料・匿名で受けられる施設が多く、梅毒、クラミジア、淋菌などを同時に検査できるところもある。ただし、実施項目、曜日、予約の要否、結果の受け取り方法は施設ごとに違う。
何を検査する?行為の部位まで伝える
「性病一式」という一つの検査があるわけではない。血液、尿、ぬぐい液など、感染症と感染部位に合った検体が必要になる。
- クラミジア・淋菌:尿または性器のぬぐい液。オーラルセックスがあれば咽頭検査、アナルセックスがあれば直腸検査も検討する
- 梅毒:血液検査。しこりや発疹が消えても自然治癒したとは限らない
- HIV:血液による抗原抗体検査が中心。早期にはNAT検査が選択される場合もある
- B型・C型肝炎:血液検査。行為内容やワクチン接種歴を医師に伝える
- 性器ヘルペス:症状が出ている部位から検体を採ることが多い。病変がある間の受診が重要
- 尖圭コンジローマ・HPV:男性では一般的な一律スクリーニングが確立していない。いぼや病変があれば診察を受ける
特に見落とされやすいのが、のどだ。性器の尿検査が陰性でも、咽頭クラミジアや咽頭淋菌が否定されたことにはならない。受付で言いにくくても、「オーラルセックスがあった」「のども調べたい」と伝えることが、検査の精度を左右する。
いつ受ける?早すぎる陰性に注意
検査可能時期は、採用する検査法や施設の方針によって異なる。以下は予約時の目安であり、最終的には受検先の案内を優先してほしい。
- クラミジア・淋菌:感染機会から数日〜1週間程度を案内する施設が多い。早すぎる場合は再検査が必要になる
- 梅毒:おおむね4週間以降が一つの目安。時期が早い陰性では否定できず、再検査を勧められることがある
- HIV:抗原抗体検査では3〜4週間頃から陽性になる可能性が高まる。厚生労働省は、陰性を確定する意味で感染機会から3か月以降の再検査を推奨している
- B型肝炎:自治体によっては感染機会から60日以上などの基準を設けている
「3か月待つまで何もできない」という意味ではない。HIVは1か月前後でも検査を受ける意味があり、陽性なら早く治療につながる。ただし、その時点の陰性だけで完全に否定せず、必要な時期に再検査するという二段構えで考える。
また、HIVへの曝露から72時間以内であれば、感染予防薬PEPを検討できる場合がある。時間との勝負なので、リスクの高い接触があった場合は検査時期を待たず、対応医療機関へ速やかに相談してほしい。
検査場所ごとの費用と向き・不向き
保健所・自治体:無料、匿名。ただし日程と項目に制約
費用を抑えるなら第一候補になる。HIVは無料・匿名が基本で、自治体によって梅毒、クラミジア、B型肝炎なども無料で受けられる。たとえば新宿区保健所は2026年度、HIV、梅毒、B型肝炎、クラミジアの匿名・無料検査を案内している。
一方、検査日が限られる、予約枠が埋まる、証明書が出ない、陽性後に別の医療機関を受診する必要がある、といった制約がある。今夜症状がある人の行き先ではない。
医療機関:数千円〜2万円前後が目安。治療へ直結
無症状の「念のため検査」は自費になりやすい。料金は施設と項目数で大きく異なるが、単項目で2,000〜6,000円程度、クラミジア・淋菌のセットで5,000〜8,000円程度、HIV・梅毒・クラミジア・淋菌など複数項目のセットで1万〜2万円前後が一つの目安だ。初診料や結果説明料が別の場合もある。
価格だけでなく、陽性時にその場で治療へ進めるか、咽頭・直腸検査に対応するか、検査法と検査可能時期を明示しているかを確認したい。
郵送検査:4,000〜1万5,000円前後。便利だが「診断」ではない
自宅で採取でき、対面の気まずさが少ない。単項目なら数千円、複数項目セットでは1万円を超える商品が多い。選ぶときは、検査を行う登録衛生検査所が明記されているか、陽性時の相談・医療機関紹介があるか、結果の保管や個人情報の取扱いが明確かを見る。
郵送検査で陽性または判定保留なら、医療機関で確認と治療が必要だ。症状が強い人、直近に高リスクの接触があった人は、キットの到着を待つより先に受診した方がよい。
結果が出るまで、性行為はどうする
疑いがある期間に別の相手と接触すれば、不安を横流しすることになる。結果が確定し、必要な治療が終わるまでは性行為を控えるのが安全だ。少なくともコンドームを使用し、相手に状況を伝える。治療後も感染症によっては再検査やパートナーの同時治療が必要になる。
検査は「潔白証明」ではなく、次の行動を決めるための情報だ。陽性でも、クラミジア、淋菌、梅毒など治療可能な感染症は多い。HIVも早期に診断し治療を続ければ、健康を保ちながら生活できる。怖いのは、結果そのものより、怖さを理由に放置することだ。
迷ったときの最短ルート
- 症状あり:今日、泌尿器科・皮膚科・性感染症内科へ
- 72時間以内の高リスク接触:PEP対応医療機関へ至急相談
- 無症状・費用を抑えたい:厚労省の検査マップで保健所を探す
- 日程が合わない:自費クリニックまたは登録衛生検査所の郵送検査を比較する
- 早期検査が陰性:受検先が示す時期に再検査する
路上での接触や相手の素性が分からないケースでは、法的・金銭的な問題も同時に起こり得る。心当たりがある人は路上売春を利用するリスクも合わせて確認してほしい。
参考資料
※本記事は2026年7月時点の一般的な医療情報です。症状や接触状況によって必要な検査・時期は異なります。診断や治療は医師へご相談ください。
