「顔は映していない」「自分で見るだけ」「相手も性行為には同意していた」。風俗店での盗撮が発覚したとき、よく出てくる理屈だ。しかし、性行為への同意と撮影への同意は別物である。スマートフォンを立てた時点、小型カメラを仕込んだ時点で、遊びは刑事事件へ切り替わり得る。
しかも、罪の重さは「撮った」で終わらない。保存する、友人へ送る、販売する、SNSや投稿サイトへ流す。画像が動くたび、別の犯罪が成立する可能性が生まれる。
2023年から、性的な盗撮は全国共通の犯罪になった
2023年7月施行の性的姿態撮影等処罰法により、性的な部位、下着、性交やわいせつな行為中の姿態などを、正当な理由なくひそかに撮影する行為は「性的姿態等撮影罪」として全国一律に処罰される。
風俗店の個室やホテルで、キャストの裸体やサービス中の姿を本人に隠して撮影する行為は、同罪に該当し得る。法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。映像に顔が入っていることは要件ではない。顔を切っても、モザイクをかけても、撮影時の違法性が消えるわけではない。
カメラを置いたが、録画できていなかった場合
「メモリーカードが空だったからセーフ」とは限らない。撮影罪には未遂処罰があり、警察庁も、実際に動画等が記録されていなくてもカメラを設置するだけで未遂罪に問われ得ると案内している。時計型、眼鏡型、モバイルバッテリー型など、機器の形は関係ない。
撮影・保存・共有で、刑事責任はどう変わるか
1. ひそかに撮影する
対象となる性的姿態を盗撮すれば、撮影罪の対象になり得る。キャストがサービスに同意していても、撮影まで同意したことにはならない。「店の利用料金を払った」ことも撮影許可ではない。
2. 提供する目的で保管する
違法に撮影された性的影像記録を、他人へ提供する目的で保管した場合、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象になり得る。クラウド、外付けSSD、非公開フォルダ、別端末へのコピーでも、「どこに置いたか」より目的と実態が見られる。
なお、撮影者が純粋に自分だけで見る目的で持っていたケースに、この「提供目的保管罪」が当然に成立するとは限らない。しかし、元の盗撮行為が消えるわけではなく、共有用アカウント、販売ページ、送信履歴などがあれば、目的は行動から判断される。
3. 一人に送る
性的影像記録を特定の一人へ提供した場合でも、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になり得る。「仲間内だけ」「DMで一人に送っただけ」は免罪符にならない。
4. SNS、掲示板、販売サイトで拡散する
不特定または多数へ提供・公然陳列した場合は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方。販売で利益を得たかどうかにかかわらず、公開範囲が広がれば被害は急速に回収不能になる。性的姿態撮影等処罰法以外にも、私事性的画像記録の提供等による被害防止法、名誉毀損、プライバシー侵害などが問題になる可能性がある。
音声だけの「盗聴」は、同じ法律なのか
性的姿態撮影等処罰法が直接対象にするのは「影像」であり、音声だけの録音を一律に処罰する法律ではない。また、日本には「無断録音はすべて犯罪」とする包括的な規定もない。だからといって、風俗店へ盗聴器を置いてよいわけではない。
無断で機器を設置するために立入目的を偽った、店の管理領域へ入り込んだ、備品を壊した、営業を妨害した、録音を脅迫や晒しに使った――その手段と使い方によって、建造物侵入、器物損壊、業務妨害、恐喝、民事上のプライバシー侵害などが問題になる。映像付きなら、当然ながら撮影罪の検討も加わる。
トラブル時の自衛目的で会話を録音する行為と、性的な音声を娯楽や販売目的で隠し録りする行為を、同じ「録音」の一語で片付けるべきではない。目的、場所、方法、内容、公開範囲によって法的評価は変わる。
店で発覚すると、何が起きるのか
キャストが不審な向きのスマートフォンや小型カメラに気づけば、サービスはその場で止まる。スタッフが部屋へ入り、警察へ通報され、端末や記録媒体が確認・押収される可能性がある。予約時の電話番号、会員情報、ホテルの防犯カメラ、決済記録も、本人特定の材料になり得る。
逮捕されるか、在宅捜査になるかは事案次第だが、「示談金を払えば事件にならない」と自分で決めることはできない。店や被害者へ直接連絡を重ねると、口止めや圧力と受け取られ、状況を悪化させることがある。
データを消せば証拠も消える、は通用しない
発覚後に慌てて削除、初期化、クラウド同期解除をすると、証拠隠滅を疑わせる行動になる。削除済みデータが復元されることもあり、共有先やクラウド側に履歴が残っている場合もある。第三者へ転送した映像は、自分の端末から消しても回収できない。
すでに撮影してしまい、発覚や通報の可能性があるなら、被害者や店と独断で交渉せず、刑事事件を扱う弁護士へ早急に相談するべきだ。ここで必要なのは、隠し方ではなく、被害拡大を止め、適切な手続きを取ることだ。
キャストや店側が盗撮に気づいた場合
- 安全を優先し、一人で端末を奪い取ろうとしない
- 可能ならスタッフや第三者を呼び、発見時の状況を記録する
- 相手の特徴、予約情報、部屋番号、機器の位置を保存する
- 画像の拡散が疑われる場合は、URLやアカウント、投稿日時をスクリーンショット等で保全する
- 警察、弁護士、掲載サイトの削除窓口へ早めに相談する
相手の端末を無理に操作したり、私刑として個人情報を晒したりすると、別のトラブルを招く。証拠保全と拡散防止は、専門家と連携して進めたい。
撮らない。それが最も安く、確実な防御
性的な映像には「一度だけ」「自分用だけ」が通用しにくい。自動バックアップ、端末紛失、アカウント乗っ取り、仲間内の転送。本人が公開する気を失っても、データは勝手に事故を起こす。
刺激的な映像を手元に残す数分の欲望に対して、失う可能性があるものは、自由、金銭、仕事、家族の信用、そして相手の生活だ。店のルール以前に、同意のない撮影はしない。これ以上に明確な線引きはない。
利用時のほかの禁止事項やトラブル回避については、初めての風俗店選び完全ガイドも確認してほしい。
参考資料
- e-Gov法令検索「性的な姿態を撮影する行為等の処罰等に関する法律」
- 警察庁「盗撮事犯に係る防犯対策」
- 警察庁「令和6年警察白書・犯罪防止に向けた取組」
- 警察庁「リベンジポルノ等の被害を防止するために」
※本記事は2026年7月時点の一般的な法制度を整理したものです。成立する犯罪や処分は、撮影対象、方法、目的、保存・共有の状況などによって異なります。個別事案は弁護士または警察へご相談ください。
